【 ENEY ENERGY EXCHANGE 】 <br><br>Ethical Director|MAO SAKAGUCHI × ENEY Brand Director|SEIICHIRO SHIMADA

【 ENEY ENERGY EXCHANGE 】 

Ethical Director|MAO SAKAGUCHI × ENEY Brand Director|SEIICHIRO SHIMADA

ENEY ブランド・ディレクター/島田成一郎が、エシカル・ディレクターとして企業や地域のプロジェクトに携わる坂口真宰氏と対談しました。瞑想を通して自分を満たすこと、エシカルとビジネスを両立させること、そして日本の地域が持つ可能性まで。二人がそれぞれの視点から、エナジーの循環と、これからつくっていきたい未来について語り合います。


01|「エシカル」と「瞑想」にたどり着くまで


島田: 坂口さんは、ずっと瞑想をされているとのことですが、いつ頃から始めたんですか?

坂口: 最初のきっかけは、19歳ぐらいの頃にスピリチュアルな本を読み始めたことですね。当時は世界的にもそういう思想や物語に注目が集まっていて、僕も「自分が正しく生きることで、偶然が偶然ではなくなって、すべてがつながっていく」という考え方に惹かれました。そこから外国の本も読みながら、見よう見まねで瞑想を始めたんです。

島田: その後、アメリカへ行かれたんですよね。

坂口: 高校3年生の交換留学から始まって、ボストンの大学へ行き、ニューヨークでも生活して、合わせて10年ほどいました。当時は完全にアメリカンドリームに憧れていて、向こうで何かを見つけたいと思っていたんです。日本へ戻るつもりはなかったのですが、いろいろな出来事があって帰国し、アッシュ・ペー・フランスに入りました。その後、ファッションやデザインの領域からエシカルの仕事へつながっていきました。振り返ると、すべてが今の自分をつくる積み重ねだったと思います。

島田: 瞑想とエシカルの仕事は、別々のものではなく、坂口さんの中ではずっとつながっているんですね。

坂口: そうですね。若い頃は失敗もたくさんしましたし、決して最初から今のように考えていたわけではありません。でも、経験を重ねて、自分と向き合うことを続ける中で、仕事も生き方も少しずつ一つになってきた感覚があります。



02|「エナジーの循環」を感じるトキ、コトとは?


坂口: 僕にとって「エナジーの循環」を最も感じるのは、毎朝欠かさず行っているヨガと瞑想です。僕の仕事は、人の話を聞いて、アイデアや言葉を返し、何かを形にしていくこと。起きている間は、ずっとエネルギーを外へ出している状態なんですよね。

島田: 瞑想は、単にリフレッシュすることとは違うんですか?

坂口: 僕にとっては、内なる自分とつながる時間です。自分をコップに例えると、瞑想やヨガは、そのコップを満杯の状態にしておくためのもの。自分を見つめて、いたわって、自分自身に満足する。健康も精神も満たされていなければ、いいアイデアを生み出したり、人に何かを与えたりすることはできないと思っています。

島田: 「考える」のではなく、五感や思考をいったん止めて、自分の内側へ意識を向けるということですよね。

坂口: そうです。無になるといっても、眠っているような状態ではなく、むしろ集中している。筋力トレーニングと同じで、毎日続けることで、その状態に入りやすくなります。そこで自分を満たし、仕事を通して外へ出して、受け取った人がまた何かを生み出していく。その流れ全体が、僕にとっての「エナジーの循環」です。

島田: 僕の場合は、スポーツをしている時が近いかもしれません。普段は頭をずっと使っているので、テニスやサッカーをして、考えない時間をつくる。自分がどうすれば回復できるかを知っておくことは、大事ですよね。


Photo by JD Mason





自分というコップを満杯にしておかなければ、人に何かを与えることはできない



03|「革新」とは人生そのもの、生き方そのもの


島田: 「革新」というと、一般的には技術や新しい発見、ブレイクスルーを思い浮かべます。坂口さんにとって、革新とは何でしょう?

坂口: 僕にとっては、人生そのもの、生き方そのものだと思います。今の自分は、これまでの出会いや経験、価値観の積み重ねでできている。その一つひとつが変化のきっかけになって、毎日少しずつ自分を更新している。だから革新は、何かを突然ゼロから生み出すことだけではないと思うんです。

島田: 一方で、社会の技術革新は目まぐるしいですよね。AIもそうですし、ENEYが扱うラボグロウンダイヤモンドも、技術の進歩によって宝飾としての品質が大きく向上してきました。

坂口: 僕はガジェットやITも大好きなので、技術革新にはすごくワクワクします。AIの恩恵も受けていますし、仕事の方法も変わってきました。ただ、エシカルを仕事の軸にしているので、テクノロジーは人や社会をより豊かにするために使われるべきだと思っています。いい方向へ進むためのアイデアや手段として使うことが大事です。

坂口: もともと僕は、展示会の中にエシカルをテーマにしたエリアをつくり、さまざまな商品を集めて紹介するところから始めています。モノや消費を通して、社会や地球について考えるきっかけをつくる。その経験があるからこそ、技術も生活者の気づきや選択につながって初めて意味を持つと感じます。

島田: 技術だけでなく、それをどうビジネスとして持続させるかも必要ですよね。

坂口: そうですね。僕はエシカルビジネスを提唱しているので、社会にとっていいことと、経済を回すことの両輪が必要だと考えています。どんなに理念が素晴らしくても、利益が出ず、継続するための資金がなければ残っていけない。矛盾を完全になくすのではなく、矛盾と共生しながら、よりよい方向へ進む選択を続ける。それも革新だと思います。



04 | 現代社会におけるエシカルとは?


坂口: 僕はエシカル・ディレクターという肩書きで仕事をしていますが、今はブランドが「エシカル」「サステナブル」を前面に押し出さない方がいい場合もあると思っています。言葉だけが先行すると、意識が高くて近寄りにくい、押し付けがましい、という印象を与えてしまうことがあるからです。

島田: 僕もENEYを「エシカルジュエリーです」と大きく言い切ることには、少し慎重です。ラボグロウンダイヤモンドは採掘を必要としない一方で、製造には電力を使います。何か一つだけを見て「これが絶対に正しい」と言うより、正確な情報を持った上で、自分たちにできることを積み重ねる方が大切だと思っています。

坂口: まさにそうですね。エシカルとは、僕の言葉では「優しい選択」です。100%完璧に実践しなければならないわけではなく、何かを選ぶ時に、その背景を知り、より優しい方を意識して選ぶ。人から押し付けられるのではなく、自分自身で考えて変わっていくことが重要です。

島田: モノを売る立場としては、環境への配慮だけでなく、デザインが美しいこと、身につけて気分が上がること、長く使えることも全部含めて価値だと思うんです。コロナ禍で不要不急のものが必要とされなくなった時期に、それでも人は、心を豊かにするものを必要としていることを改めて感じました。それがENEYを立ち上げる一つの理由になっています。

坂口: なるほど。エシカルも我慢して選ぶのではなく、純粋にかっこいい、欲しいと思える。そして、後から背景を知ったら更に気持ちよく使える。そういう選択肢を、企業やブランドと一緒に増やしていくことが、僕と社会との関わり方だと思っています。

島田: ENEYも、天然ダイヤモンドを否定するのではなく、ラボグロウンダイヤモンドという新しい選択肢を知ってもらうブランドでありたいですね。ジュエリーは地金や石、デザインに価値があり、長く使い続けることができる。その価値を正確に伝え、身につける人の気持ちを豊かにすることが、自分達が社会に対してできることだと思います。


Photo by Edgar Soto

 



エシカルとは「優しい選択」 

正しさを押し付けるのではなく、選択肢を増やしていく

 


 

 


05 | 本質的な価値を更に大きな循環へ


島田: 坂口さんは、これからどんなことに取り組んでいきたいですか?

坂口: 最近は地方へ行く機会が増え、サステナブル・ツーリズムに大きな可能性を感じています。日本の地方には、文化、自然、食、人という、まだ十分に伝わっていない価値がたくさんある。そこへエシカルビジネスで培ってきた経験やアイデアを掛け合わせて、国内外の人へ伝え、その土地の価値を高めるプロジェクトを増やしていきたいです。

島田: 人が集まりすぎることで、自然や地域の暮らしが損なわれることもありますよね。

坂口: だからこそ、単に観光客を増やすのではなく、本当の価値を理解した上で訪れてもらう仕組みが必要です。地域の人、観光事業者、宿泊事業者、行政が一緒になり、文化や自然を守りながら経済も循環させていく。僕は人口が減ること自体を悲観していなくて、数を追うよりも、一つひとつの資源や体験の価値を高める方が、日本には合っていると思っています。

島田: ENEYも、将来的にはジュエリーからもう少しライフスタイルへ広がっていきたいと思っています。ずっと構想しているのが「ENEY PARK」です。自然の中で宿泊できて、おいしいものを食べ、農業や酪農を体験し、買い物も楽しめる。一つの小さな社会のような場所をつくりたいんです。

坂口: すごくいいと思います。大きなビジョンがあるからこそ、いろいろな人やアイデアを巻き込める。宿泊や食、地域とのつながりまで含めると、ENEYの「エナジーの循環」という考え方が、より立体的になりますよね。

島田: ENEYが目指すのは、単に優しくてナチュラルな空間ではなく、食の力、アートの力、音楽やファッションの力など、さまざまなカルチャーが合わさって、エナジーが溢れる場所にしたい。そこで得た力が、また誰かの暮らしや仕事へ循環していくような世界をつくりたいと思っています。

坂口: 自分を満たすことから始まって、人へ渡し、仕事や地域へ広がり、また自分たちへ返ってくる。今日話してきたことは、全部そこにつながっていますね。

島田: そうですね。ジュエリーというプロダクトを起点にしながら、その先にある体験や場所、人と人との関係までデザインしていく。ENEYが生み出すエナジーの循環を、これからもっと大きくしていきたいです。